平原綾香さんの「Jupiter」で一躍有名になったクラシック曲が、ホルスト作曲の「木星」です。
この木星という曲は、オーケストラ組曲「惑星」という曲集の中の1曲で、クラシック音楽界でも人気の1曲となっています。
そんな組曲「惑星」、実は全7曲あってかなりスケールが大きいのですが、昨今はあまり全曲通して聴かれないのが少し残念・・・
へみ
そこでこの記事では、惑星全7曲の魅力を初心者にもわかりやすいように解説していこうと思います!
目次
「惑星」の作曲家、グスタフ・ホルストってどんな人?
惑星を作曲したホルストは、1874年生まれのイギリス人作曲家です。
へみ
作曲家、といってもこの「惑星」以外にヒットした曲がなく、音楽教師やオーケストラのトロンボーン奏者として生計を立てていました。
作曲した曲の多くは合唱曲で、イギリス民謡など昔からある音楽をモチーフにして作られたものが多いです。
惑星でも「木星」にイギリス民謡が用いられていたり「海王星」に女声合唱が組み込まれていたりするんですよ。
惑星の全7曲をクラシック初心者向けに解説
惑星は、占星術にインスピレーションを得て作られたと言われています。
それぞれの楽章には惑星の名前が付いているのですが、副題はまさに占星術の惑星イメージそのもの。
へみ
私も占星術が好きなので、占星術の知識も少しずつ交えながら解説していきます♪
ぜひそれぞれの楽章の雰囲気を感じながら聴いてみてくださいね。
「火星」戦いをもたらすもの
火星は占星術ではとてもエネルギッシュな惑星です。情熱的でスピード感もありますが、同時に攻撃性やアクシデントも起こりやすいというサインが隠れています。
楽曲は珍しい「5拍子」で、重厚な金管楽器が今から戦いに向かうような雰囲気を醸し出しています。
惑星が作曲されたのは、ちょうど第一次世界大戦の頃。
初演の時に群衆がざわついたというエピソードもありますが、ホルスト自身が「第一次世界大戦がモチーフではない」と否定しています。
「金星」平和をもたらすもの
不協和音で火星が終わったあとに訪れるのが、金星の平和な時間です。金星はみなさんご存知のとおり愛の星で、争いとは真逆の「調和」を表します。
平和といっても宇宙の神秘的な雰囲気が前面に押し出されていて、特に中間部のカンタータ(ヴァイオリン独奏)は聴きごたえ抜群。
このあたりは、ホルストの生まれた頃である「フランス印象派時代」の流れを汲んでいるのかな、と感じられます。
「水星」翼のある使者
コミュニケーションや知性を表す水星。スピード感がある星のイメージにふわさしく、あっという間に過ぎ去ってしまう曲です。
へみ
演奏者としては音の飛び方が目まぐるしいのと、拍子がすごく取りにくいので、何気に一番必死になる曲かもしれません・・・
機動力のある(素早い動きが得意な)木管楽器や弦楽器が主体で、チェレスタやグロッケンでかわいらしい要素が足されているのも魅力的です。
「木星」幸せもたらすもの
木星は占星術で幸運の星で、物事を大きく発展させる意味も持ちます。
楽曲もまさに大きく発展していくイメージで、木星単体でも聴きごたえがありますよね。
ホルスト自身も木星には愛着があり、特に有名な中間部(平原綾香さんのJupiterで有名な部分)には後に歌詞を付けたほどなんです。
「土星」老いをもたらすもの
木星が発展を表すのに対し、土星は「停滞」のサインを表します。
メロディの動きがほとんど見られないこの楽章で、動いているのはほぼフルートとハープ。この2つの楽器はベルや鐘の音を表現していて、ゆっくりゆっくり時が刻まれていきます。
全曲通して最も和音が不安定で、聴いていて着地点がありません。が、ゆったり進んでいくので瞑想しているような不思議な落ち着きを得られますよ。
「天王星」魔術師
天王星は「変革」をもたらす星です。天王星が絡むと、占星術ではそれまでの常識が打ち破られるようなサインを表すことも珍しくありません。
そんな天王星の楽章は、まさに「ファンタジック」です。というか、主題のファゴットの動きはデュカスの魔法使いの弟子をパk・・・彷彿とさせますね。
へみ
ちなみに、デュカスの魔法使いの弟子はハロウィンクラシック特集でも紹介しています。同じくファンタジックな曲が聴きたい方は、ぜひご覧ください。
実はこの曲、作曲者のホルストの名前にちなんだコード進行をしているんです。
ソ(G)- ミ♭(Es) – ラ(A)- シ(H)という音の動きが、最初に提示されたあとも曲中で何度も出てくるので探してみてくださいね。
「海王星」神秘なるもの
占星術ではインスピレーションや曖昧さを持った海王星。火星と同じ5拍子の楽章ですが、火星よりも調性が曖昧なため「何拍子?」と迷子になる人が続出します。
海王星の最大の特徴は、途中で女声合唱が出てくること。フルートやハープに見事に溶け込んでいて、神秘的な雰囲気をぐっと高めています。
へみ
実はこの女性合唱「舞台裏で」歌うよう指示があり、最初コンサートで聴いた人は、どこから何の音が聴こえているのかこれまた迷子に・・・
最後は「音が消えるまで繰り返す」という指示があり、165年かけてゆっくり1周する海王星の神秘性が強調されています。
ホルスト「惑星」に冥王星はない?
実は「惑星」が初演された1920年には、冥王星は見つかっていませんでした。1930年に冥王星が見つかり、ホルストは「冥王星」に着手しましたが完成前に病に倒れついに完成しませんでした。
その後、ホルストの意志を継いだ学生や研究家が冥王星を作曲し「冥王星付き」で演奏される事もあります。
ですが冥王星が2006年に惑星から準惑星になったことから、最近はまたホルストのオリジナルで演奏される事が増えてきました。
ホルスト「惑星」をパートごとに解説!
ホルストの惑星は、通常のオーケストラよりも大規模なオーケストラで演奏されます。
単に人数が多いだけではなく、楽器の種類でも珍しいものがたくさん。
それぞれのパートの「聴きどころ」も含めて解説します。
ホルストの惑星「弦楽器」の解説
- 第一ヴァイオリン
- 第二ヴァイオリン
- ヴィオラ
- チェロ
- コントラバス
編成は一般的なオーケストラと同じですが、いかんせん木管楽器や金管楽器のボリュームが大きいので、多人数で演奏されることが多いです。
へみ
弦楽器全員で40~60人くらい乗ることが多く、ステージ上はかなりぎゅうぎゅう…(笑)オーケストラの正団員だと足りずに、エキストラを呼んでくることも少なくありません。
通常弦楽器といえば、大抵の曲で「主役」「メロディが多い」という役割ですが、惑星では意外とメロディラインを演奏する割合が少なめ。
細かい動きが得意なので「星のキラキラ感」を演出する側になりがちです。
そんな中、「金星」のヴァイオリンソロはなんとも高貴で艶やか♪大人数のなかたった一人で演奏するソロですが、存在感抜群です。
ホルストの惑星「木管楽器」の解説
- フルート(1st,2nd)、アルトフルート、ピッコロ
- オーボエ(1st,2nd)、イングリッシュホルン、バスオーボエ
- クラリネット(1st,2nd,3rd)、バスクラリネット
- ファゴット(1st,2nd,3rd)、コントラファゴット
こちらもかなりのボリュームですね!
木管楽器は「水星」や「天王星」など、おどけた雰囲気や飛びまわるような雰囲気の曲で活躍します。
へみ
音符が細かいのと、予想外の音列で#♭が多用されているので、演奏者は結構必死だったりします。
アマチュアだと音符が細かすぎて「空中分解した」「数人取り残される」という事も多いのですが、プロの音源だと一糸乱れぬ演奏で圧巻!
個人的にはカラヤン×ベルリンフィルの惑星のスマートできっちりした演奏に勝るものはないと思っています。
上記の音源、特に「木星」が聴きたいなら外せない1枚ですよ♪
ホルストの惑星「金管楽器」の解説
- ホルン(1st~6th)
- トランペット(1st~4th)
- トロンボーン(1st,2nd,3rd)
- チューバ、バスチューバ
はい、本日の主役です(笑)
特に「木星」では花形級の活躍をする金管楽器。ソロ、ファンファーレ、リズム打ちまで何でもこなします。
火星、金星、木星はホルンのメロディではじまり、天王星はトランペットのメロディで始まるのですが、その部分だけ切り取ってもホルストがいかに金管楽器に重きを置いたのかが分かります。
へみ
ちなみに、これ以外の曲は「低音のフルート」で始まる、ミステリアスな雰囲気を醸します。ドビュッシーの”牧神の午後への前奏曲”を彷彿とさせますね。
ホルストの惑星「打楽器」の解説
- ティンパニ
- バスドラム、テナードラム
- シンバル、クロタル(アンティークシンバル)
- トライアングル
- グロッケンシュピール(鉄琴)
- シロフォン(木琴)
- タムタム(ゴング)
- チューブラベル
- チェレスタ・オルガン
オーケストラの打楽器といえば「ティンパニのみ」の場合も多いのですが、見てくださいこの種類の多さ!
へみ
持ち替えが一部可能ですが、最低6名が必要です
打楽器の種類が多くなる曲は、惑星のうち「木星」「天王星」。
木星ではトライアングルやタンバリン、グロッケンシュピールで小さい星屑のような装飾が、天王星ではシロフォン(木琴)がおどけたような表情を見せるのが魅力的です。
ホルストの惑星「特殊楽器」の解説
打楽器の項目で「これってどんな楽器?」と思った方もいるのではないでしょうか。
そこで、惑星に使われる特殊な楽器を登場シーンとともに紹介していきます。
タムタム(ゴング)
いわゆる「ドラ」ですね。実は、火星の一番最初から鳴っています。
英語表記でGongということで、やはり戦いモチーフの火星にはなくてはならない楽器なのではないでしょうか。
タムタムはこの火星と、天王星の後半に少しだけ登場します。
チューブラベル
NHKのど自慢でおなじみの楽器ですね!
惑星中では「土星」に登場します。
老いをつかさどるもの、という事で刻を告げる鐘をモチーフにしていると言われています。
オルガン
火星、土星、天王星、海王星、と意外と多くの曲に登場するオルガン。
地の底から響いてくるような低音を補強するのに使われていて、より荘厳さが増しています。
ハープ2本
ホルストの惑星はハープもふんだんに使われています。
一斉に鳴らしている場面はあまり目立ちませんが、最後の海王星で聴かせどころがたくさん。
トレモロやグリッサンド、アルペジオなど幻想的な雰囲気を醸し出してくれます。
チェレスタ
鍵盤をたたくと中の鉄琴が鳴る「チェレスタ」。くるみ割り人形の金平糖の精の踊りでも有名ですね。
かわいい雰囲気のチェレスタなので、金星や水星、天王星などでよく活躍します。
グロッケンシュピール(小さな鉄琴)と間違えやすいですが、ややトイピアノのような響きがチェレスタです。
女声合唱(7声部)
曲ごとの解説でも紹介しましたが、海王星では女性合唱が登場します。
7つのパートに分かれていて、舞台袖から聴こえてくるので、まるで教会の外から讃美歌を聴いているような崇高な響きとなります。
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コンサートでも大人気のホルスト「惑星」は、多数のオーケストラが音源を出しています。7曲からなる壮大な組曲なので、演奏者や指揮者によって曲の表情は様々。
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