音楽の環境・設備というと、スピーカーが語られることが多いです。詳しくは後述しますが、スピーカーは特に音の特徴が変わりやすいのでよく語られます。
ただ、実際はDACやアンプなど音楽再生を取り巻く環境はさまざまな要因で決まるんです。
今回はストリーミングに主眼を置くためオミットできる部分もありますが、より高音質で楽しみたいなら以下のような環境を整えることをおすすめしますよ。
まず、PCにDACを内蔵したポータブルアンプ(以下ポタアン)を繋ぎます。そしてポタアンにスピーカーやヘッドホンなどを繋いで、再生するという構成です。
ストリーミング用途に限らない場合は、独立したDACと独立したアンプを繋ぐことが多い傾向があります。
だけど、それは結構大変です。PCやスマホに手軽に繋いで環境を構築するには、あまり向きません。
ストリーミングは手軽さがウリなので、環境も手軽に整えられる方が良いでしょう。
目次
DACとは? 役割を徹底解説します!
PCやスマホに直接接続することになるDACについて、説明します。アンプは知っていてもDACは知らない、という人は多いでしょう。オーディオマニア以外には知名度が低いですからね。そんなDACの役割について、じっくりと見ていきましょう。
DACの役割はアナログ信号への変換
DACは、デジタル信号をアナログ信号に変える役割を持っています。
ストリーミングに限らず、ほとんどの音楽メディアはアナログ信号をデジタル信号に変えているんです。こうすることでデータサイズを小さくしつつ音質劣化を防いでいます。
ただ、再生するときにはアナログ信号に戻さないといけないんです。
これを、PCでは内蔵のDACが行っています。Windowsにあるカーネルミキサーというのが、それです。
しかし、カーネルミキサーは複数のアプリから出る音を同時に再生することを前提としています。通知音やエラー音と音楽を混ぜるイメージですね。この仕様のため、通常の利用では音質が劣化してしまうんです。
そこで、DACの出番です。
DACで音が変わる? 理由を紹介
まず、DACはデジタル信号をアナログに変換しますが、元の音源を完全に復元することはできません。
じゃあ最初からアナログで聞けばいいじゃん、と思うかもしれませんが、これも難しいです。アナログで録音した音声をアナログで聴くと、デジタル以上に音質劣化があると言われています。
DACはというと、デジタル・アナログ両方の要因から音が変わるんです。デジタルをアナログに変換するためですね。これが、DACによって音が変わる理由となっています。
まず、デジタル音声データをDACに送った後にカーネルミキサーを通すことになります。このバイパス作業により、ノイズと音質劣化が低減されるのが恩恵です。
さらに、デジタル音声データはアナログから変換する際に、ある程度音を削っています。一番削られているのは、超高音域です。このような削られた音をアナログ変換することで復元しよう、とメーカーは躍起になっています。
そのため、高性能なDACを選べば音の復元率も高くなり、音の表現や音場が豊かになるんです。
アンプとは? 役割やDACとの違いを解説します
アンプについてはDACと違い、名前は知っているという人が多いでしょう。ただ、役割や詳しいことは知らないという人も多いのではないでしょうか。そこで今度は、アンプの役割やDACとの違いについて解説していきます。
アンプの役割は音の増幅
アンプの役割は、主に音の増幅です。ヘッドホンやスピーカーで聴くのに適したレベルにまで、出力を上げてくれます。
プリメインアンプと呼ばれるものがあります。音質を調整・切り替える役割を持ったプリアンプと、出力を増幅させるパワーアンプ(メインアンプ)とが一体になっているものですね。プリメインアンプを使えば、音質自体も良くすることができます。
一方ポタアンには、プリアンプの役割がありません。
ヘッドホンやスピーカーが本来の実力を出すには、ある程度の出力が必要です。
だけど普通のPCやスマホだけでそれを担うのは、難しいんですよ。結局出力が足りず、本来の実力を発揮出来ないというケースが多々あります。
要は、顔が濡れたアンパンマンのようなものです。アンパンマンに新しい顔を与えて元気100倍にした状態が、アンプで出力を増幅させた状態だと考えると良いでしょう。
DACとの違いは簡単!
DACとアンプとの違いは、明確です。
DACは音源を変換するもので、音の広がりや音質に直接影響を与えます。
一方アンプは、音源自体には直接干渉しません。ヘッドホンやスピーカーへの出力を増幅させるものです。
つまり、DACは音源がより良い質を発揮するのを支えているのに対し、アンプはスピーカーなどの出力機器がより高い能力を発揮するのを支えています。
干渉し、支える対象が違うんです。
DAC内蔵ポータブルアンプが人気
今回はストリーミング環境を整えるということで、ポタアンをおすすめしています。
ポタアンはプリメインアンプよりコンパクトで、PCやスマホなどにも接続しやすいです。扱いやすさが魅力ということですね。
近年は、DAC内蔵ポタアンが主流になっています。昔は単独のDACと単独のポタアンを接続する方式をとる製品が多かったんですが、今ではごく少数のみです。
スピーカーにはお金をかけるべき! その理由とは
スピーカーにはお金をかけたほうがいい、とオーディオ好きな人は声を揃えて言います。
理由は、簡単です。
DACによる変換でどれだけ音質を良くしても、アンプがどれだけの駆動力を持っていたとしても、最終的な音質はスピーカーに左右されるため。
スピーカーにも、さまざまな性能の違いがあります。
せっかく音質が良くても、スピーカー自体の性能が追いついていなければ、本来の音質を引き出せません。だからイヤホンなどにも「ハイレゾ対応」などの文言が付いているんですね。
逆に、スピーカー性能が高ければ、より豊かな音を楽しめるということになります。
さらに、スピーカーは音の傾向が最も変わりやすい部分です。
低音がブーストされたりクリアでリアルな質感を再現していたりと、スピーカーだけで結構変わります。
つまり、低音を強調するDACを選んだとしても、スピーカーが低音向きでなければ低音をよりよく楽しめないということです。
DACとスピーカーは、ある程度似た特徴を持つ方が都合が良いんですよ。
スピーカー選びに必要な知識を徹底紹介! ユニットや形状とは?
スピーカーにはお金をかけたほうが良いですが、お金だけかければ良いというわけではありません。自分の好みの音に合ったスピーカーを選ぶ必要があります。そこで、スピーカーを選ぶ際に必要になる知識を徹底的に紹介しましょう。
ユニットって何?
ユニットは、数によって得意な音域などが変わります。
まずは、フルレンジから紹介しましょう。
フルレンジは1ユニット(1WAY)で構成されています。ユニット1つで低音から高音域までカバーするんですが、低音用・高音用のユニットがありません。そのため、低音と高音の再現性は低いです。
一方、中音域は得意となっています。
さらに、フルレンジには点音源という特徴があるんです。
1つの点から音を出して、全方向に同じ強さで音を伝えるというものですね。これにより、ユニット複数配置と比べて全音域でタイムラグが無い、音像定位がハッキリした音を楽しめます。
簡単に言えば、音の方向や距離のことです。
人間には、これを聞き分けられる能力があります。コンサートホールで「右から管楽器が鳴ってる」と認識する感じですね。
オーディオは、この音像定位による臨場感を再現するという基本思想で作られています。
ただ、スピーカーはたくさんあるわけではありませんよね。たいていは、2つか3つです。
そこで、スピーカーから出る音の時間差により、距離感などの錯覚を引き起こすことでスピーカーから音像定位を感じられるようにしています。
この時間差はスピーカーのは位置によって、ずれたりするんです。ずれると「ボーカルが右端にいる…」という違和感を抱いたりします。
フルレンジはそんなことをしなくても定位がハッキリしているから、楽です。
続いて、2WAYがあります。
これは、低音域と高音域をそれぞれ1つのユニットが担当するタイプです。低音と高音が得意ですが、中音は若干苦手な傾向があります。
次は、3WAYです。
2WAYの苦手分野をカバーすべく、中音域用のユニットを搭載しています。
たいていは、この3つのうちいずれかに当てはまるんですが、例外もあるんです。
それが、2WAY3ユニット。
高音域用がひとつ、同じ周波数帯の低音用がふたつという変わった構成をしています。低音がとても得意ですが、中音域は苦手です。
ユニットの形状で音が変わる? 違いを紹介
まず、コーン型。
低音域用ユニットであるウーファー、中音域用のユニットのスコーカーに採用されます。音声信号をボイスコイルという部分で受け取って、マグネットでコイルに振動を起こし、それをコーン紙に伝えることで音を出すという仕組みです。
大口径の低音域用スピーカーの深い振幅には、耐えきれません。
そのため、実際は中音域用で採用されることが多いです。
続いて、ホーン型。
スコーカーとツイーターに使われます。ツイーターは、高音域を担当するユニットです。
後述のドーム型などと同時に使われます。ドーム型などから発生した音をラッパ状になったホーンで放射し、音を出す仕組みです。
音が広がるような鳴り方ではなくて、前に飛び出してくるような鳴り方をするという特徴があります。
次に、リボン型。
ツイーターに使用されることが多いです。繊細なサウンドが得意で、ハイレゾやSACDなどが再現してくれる超高音域に向いているという特徴があります。
一方、低音には不向きです。
最後に、ドーム型。
ツイーターやスコーカーに採用されます。ドーム型になった振動板を動かして音を出す仕組みです。
指向性が広く、音が広がるような鳴り方をします。ここから指向性を狭めるのがホーン型ということですね。
綿のソフトドームと、アルミのハードドームがあります。
ソフトは耳障りが良く柔らかい音になる傾向があり、ハードはメリハリがハッキリとした派手な音になる傾向があるんです。
スピーカー形状によっても音は変わる! 違いを紹介
まず、ブックシェルフ型。
本棚に置けるくらいのコンパクトサイズで、置きやすいのが魅力です。
ただし、容量が小さくユニットの個数はあまり増やせません。そのため低音域にはあまり向かないので、注意が必要です。
続いて、フロア型。
床に直接置くタイプですね。容量が大きいので設置が少し不便ですが、その分低音域の再生も得意だという特徴があります。低価格帯から高級まで幅が広いです。高級スピーカーは、ほとんどがフロア型になっています。
次に、トールボーイ型。
身長が高くて細長いタイプのことです。テレビの脇など、置く場所をあまり選ばないことと、見た目のおしゃれさが魅力だと言えます。
比較的容量が大きいので低音域も出やすいです。ユニットは複数あるものが多い傾向があります。
ただし、音の再現性や定位表現による繊細さには欠けるので、マニアにはそこまで好かれません。
最後に、埋込み型。
天井や壁に埋め込むタイプです。たくさん埋め込めば定位も完璧にできますが、壁に穴を開けられる環境を用意できる人じゃないと使えません。
エンクロージャーって何? 基本と種類を解説
エンクロージャーはユニットをおさめている箱のことです。
箱の容量が大きいと、低音が強くなります。
ただ、大きすぎると低音の全体的な音圧はかえって小さくなるんです。そのため、低音が聞こえなくなることがあります。
逆に小さいと低音が伸びないので、大きすぎても小さすぎてもダメです。
あと、バスレフ型と密閉型という種類もあります。
バスレフ型は、前面または背面に、空気孔があります。これにより低音を増強してくれるんです。それでいて容量自体は変わらないので、音の違和感などもありません。
ただ、背面に空気孔があるタイプは壁との距離によっては変に反響してバランスが悪くなります。
密閉型は、空気穴が無いタイプです。音圧を出すのにそれなりの出力が必要ですが、音に透明感が生まれます。音の解像度も高く、全体的に引き締まるのが良いところですね。
ただ、低音を上げるために容量を上げるという方法を取るため、難しいものでもあります。
ストリーミング対応のDAPを買うと手軽に楽しめる! 選び方は?
DACとアンプとスピーカーなどの出力機器が、相性良く合わさってこそ理想的なストリーミング環境が生まれます。ただ、これまで語ってきた通り、結構難しいです。もっと手軽に楽しみたい、ということならストリーミングに対応したDAPをおすすめします。
そこで、DAPとはなにか、どう選べばいいのかについて紹介しましょう。
DAPとは? ストリーミング対応機種のメリットも解説
DAPは、デジタルオーディオプレイヤーの略です。
つまりウォークマンのようなものですね。(ウォークマンもDAPの1つです)
内蔵ストレージやSDカードなどに音楽を入れて、どこでも手軽に音楽を楽しめるというものです。今はもうMP3プレイヤーという言い方はしません。MP3以外のファイル形式がたくさんありますから。
ストリーミング音楽配信を聴けるDAPがあるんです。
ストリーミング対応のDAPの良さは、ハイレゾ対応の機種が多いという点にあります。しかも、あらゆる音源をハイレゾ相当の音質に変えて楽しむことができるんです。つまりDACなどが行っている音質劣化の低減やノイズ削減などを、内蔵のシステムが行ってくれるようなもの。
難しい環境構築をしなくても、手軽に良質な音を楽しめます。
ストリーミングの手軽さという面に、特に合った形と言えるでしょう。
ただ、自分で環境を構築するよりは自由度が低いです。
たとえば特定音域を強めたりといったことは、苦手。そのうえ、とことんこだわれば自分で環境を構築した方がクオリティが高いケースも多々あります。
対応ファイル形式、量子化ビット数をチェック
ストリーミングだけで使うならそこまで気にする必要はないかもしれませんが、念の為対応ファイル形式をチェックしましょう。
多くのDAPは「FLAC」「WAV」「ALAC」「AIFF」「MP3」「AAC」など、主流な形式には対応しています。
ただ、ハイレゾ音源に関してはハイレゾ対応のDAP以外は再生できません。ストリーミング対応のDAPでもハイレゾには非対応というケースがあるので、チェックしておくと良いでしょう。
ハイレゾ対応の有無を確認するには、量子ビット数/サンプリング周波数をチェックすることをおすすめします。
ハイレゾの場合、最低でも24bit/96kHz以上です。
ヘッドホンアンプ部分の品質をチェック
DAPはヘッドホンやイヤホンを使うため、ヘッドホンアンプが搭載されています。
この部分は、電気抵抗値を表すインピーダンスも見ておくと良いでしょう。抵抗値が高いDAPほどにノイズが入りにくくなり、ヘッドホンの能力を引き出しやすくもなります。
たとえば高級ヘッドホンの中には300Ω程度のものがありますが、DAPだと150Ωまでというモデルも少なくありません。自分が使う予定のヘッドホンの抵抗値と、DAPの抵抗値を両方チェックしておきましょう。
バランス接続対応の有無をチェック
バランス接続は、通常の方式に比べて左右の音が混ざりにくくしたものです。左右の音が混ざりにくく、より音楽をクリアに楽しむことができます。端子規格は2.5mmと4.5mmmの2種類があるんです。
通常のDAP端子は3.5mmステレオミニジャック。
よりクオリティにこだわりたい場合は、バランス接続に対応しているものを選ぶことをおすすめします。
重量やバッテリー容量をチェック
最後に、重さやバッテリーの容量を見ておきましょう。
DAPは持ち運んで使いたいですよね。持ち運ぶなら、なるべく軽いもののほうが便利です。
さらに、バッテリー容量も大きいほうが良いでしょう。バッテリー容量は4400mAh程度でだいたい8時間連続再生できる、というような基準があります。容量が大きいものは連続20時間再生可能というものもあり、結構差がでるので留意しておきましょう。
自分の好みに合ったストリーミング環境を整えよう!
ストリーミング環境と一口に言っても、実際はさまざまな要素の組み合わせです。
DACもスピーカーも、メーカーや製品ごとに特色があります。音質と音の傾向が変わるので、自分の好みに合ったものを選ばないと不満が出るでしょう。
さらに手軽にストリーミングが楽しめるDAPもあります。
家でじっくり高クオリティな音を楽しみたいのか、それとも家でも外でも気軽に楽しみたいのか…。
自分の用途や好みに合わせて、環境を整えていきましょう!