ここ何年か、ハイレゾが注目されています。
製品にもハイレゾ対応というマークが付いていたり、何かとハイレゾが推されている印象がありますよね。だけどハイレゾはオカルトなのではないか、意味がないのではないかという意見もあります。
そこで今回は、ハイレゾの定義、ハイレゾ音源に意味はあるのか、またハイレゾを楽しむのに何が必要で何が不要なのかを紹介しましょう。
目次
そもそもハイレゾとは? 定義を解説!
ハイレゾ、ハイレゾと言うけれど、具体的にハイレゾがどのような音源を指すのかは知らない人が多いでしょう。なんとなく良い音なのだ、ということくらいの認識が多数。そこでまずは、そもそもハイレゾとは何か、定義について紹介します。
日本オーディオ協会によるハイレゾの定義
ハイレゾの定義は団体によって異なるのですが、まずはハイレゾマークに関係の深い日本オーディオ協会によるハイレゾの定義を紹介しましょう。
- 録音マイクの高域周波数性能が40kHz以上
- スピーカー・ヘッドホン高域再生性能が40kHz以上
- FLACまたはWAVファイルで96kHz/24bit以上
重要な部分だけ抜き出すと、こんな感じです。CD音源が44.1kHz/16bitなので、CDに比べて数値が大きいことがわかります。96kHzと書かれているのはサンプリング周波数、24bitと書かれているのが量子化ビット数というものです。
これについては後ほど、詳しく説明します。
この規格は、ハイレゾマークの認証基準にも使われているようなので、ハイレゾマークがあればこの条件を満たしているということになります。
これが後で問題になるので、覚えておきましょう。
JEITAによるハイレゾの定義
JEITAのオーディオネットワーク事業委員会というところも、ハイレゾの定義をしています。
そこの基準はとても広く、CD音源よりサンプリング周波数および量子化ビット数が高い音源というものです。
CDは44.1kHz/16bitなので、この左側と右側の数値が両方、これを上回ればハイレゾということになります。
たとえば48kHz/16bitだと、サンプリング周波数はCD音源を超えているものの量子化ビット数が同じなので、ハイレゾではないということです。これが48kHz/24bitだと、ハイレゾということになります。
両方がCDがより上という基準はわかりやすいですが、この基準だと日本オーディオ協会の基準よりもハイレゾの認定基準がガバガバになりますね。
ハイレゾの基準となる「kHz」「bit」を解説!
ここまでサンプリング周波数(kHz)と、量子化ビット数(bit)の話が出てきました。ここで、それぞれについて詳しく説明します。
サンプリング周波数は、1秒間にどれだけの細かさで記録しているかを示す数値です。つまり、1秒あたりのデータ量ということになります。映像に例えるなら、コマ数ですね。1秒間に30コマの映像よりも、60コマの映像のほうが滑らかかつ実際の動きに近いように見えるでしょう。
これと同じように、1秒間あたりのデータ数が多い方が、より実際の音声に近くなるんです。
量子化ビット数は、音の振れ幅の大きさをどれだけの細かさで記録しているかということを示しています。つまり、音の表現がどれだけ繊細かということです。数値が大きくなるほどに繊細な音楽表現が可能になります。
ハイレゾマークとは?
ここまでハイレゾの定義について語ってきましたが、じゃあハイレゾマークとは一体何なのでしょうか。
製品ページやパッケージについている、金ピカのマークです。DAPの場合は本体背面にシールが貼られていたり、お好みで使えるシールが付属したりすることがありますね。
実はハイレゾマークは、ソニーに商標権があるんです。そして使用の許可基準は、日本オーディオ協会の示すハイレゾの定義となっています。ソニーが以前から使っていたロゴマークを、そのまま日本オーディオ協会が使っているんです。
権利関係が少しややこしいんですよね。
しかも、このハイレゾマークは日本オーディオ協会の会員メーカーまたは販売員でないと扱うことができません。
つまり、ハイレゾマークが付いた製品を扱うメーカーは、全て日本オーディオ協会の会員ということになります。
少しきな臭いですよね。
実際はハイレゾ対応と言っても良いような製品でも、日本オーディオ協会の会員でなければハイレゾマークは付きません。
ハイレゾ音源はオカルト? 意味がないのか徹底解説
ハイレゾの定義とハイレゾマークについて語ってきたところで、ハイレゾ音源はオカルトなのかどうか、説明していきます。ハイレゾ対応イヤホンが意味がないというだけでなく、ハイレゾ自体意味のないものだと怪しむ声もネット上だと多いです。
特にハイレゾが日本で推され始めた頃は、多くの人がオカルトだと嘲笑しました。それが今では受け入れられているわけです。
じゃあ実際はどうか。
結論から言えば、ハイレゾ音源自体は意味があります。
というのも、ハイレゾ音源の定義は前述したようにCD音源よりサンプリング周波数と量子化ビット数が高い音源です。日本オーディオ協会の基準では、96kHz/24bit以上の音源ということになっています。
そして、サンプリング周波数はどれだけ原音に近いかを表しており、量子化ビット数はどれだけ音の表現が細いかを表しているということでした。
これらの事実を考慮すると、CD音源より原音に近く細やかな表現ができるというハイレゾのウリ文句は間違っていません。
意味が無いとは、決して言えないんです。
ただし、自分の耳で聞いて違いがわかるかどうかは別の話ですよ。
たとえばヘッドホンの高域再生性能が40kHz以上という基準がありますが、これは人間の可聴域の2倍です。人間の可聴域は20Hz~20kHzまでとされています。
実際にはそれより上の音も聞き分けられる人もいるものの、すぐにピンとくるようなものではないでしょう。人によっては全くわからない、ということもあります。
そもそも、音響機器に詳しく、耳が肥えているような人でなければ細かな音の違いを聞き分けるのは難しいですから。
理論的には意味があるけれど、自分にとって意味があるかどうかは自分次第といったところです。
ハイレゾ対応イヤホン・ヘッドホンは意味がない?
ハイレゾ音源自体はCD音源より音質が良く、意味があるものだということを説明しました。ただし、ハイレゾ対応イヤホンとヘッドホンおよびスピーカーについては、ハイレゾ対応かどうかはあまり意味がないんです。その理由を、順を追って説明します。
ハイレゾ対応イヤホンの定義に問題がある
ハイレゾ対応イヤホンの定義には、少し問題があります。
最も大きな問題は、スピーカー・ヘッドホン高域再生性能40kHz以上という部分です。これは高音域の規格で、低音域に関しては規格が無いんですよ。
高音域が高いのは凄いじゃないかと思うかもしれませんが、実はそうとも言い切れません。安いイヤホンでも、高音域だけは性能が良いということがよくあります。そのためか、安いイヤホンを買うと「高音はいいけど低音はなあ…」と感じることが多いです。
低音域がより低いところまで出る方が、貴重ということ。実際、そういう製品はコストがかかるのか高価なものばかりとなっています。
高音重視の基準にして、安価な価格帯のイヤホンなどに付加価値をつけたいという意図もあるのでしょう。
ハイレゾを楽しむのに大事なのは音の解像度
そもそもハイレゾの定義というのは、このフォーマットに対応しています、このサンプリング周波数と量子化ビット数に対応しています、ということに過ぎません。実際、FLACとWAVが再生できて96kHz/24bit以上の音が出れば良いわけです。
そしてミドルクラス以上、または高級メーカーのエントリークラス以上の多くのイヤホンやスピーカーは、対応しています。
大事なのは、ハイレゾに対応しているかどうかというよりも、どんな音を出すのかということです。
特に、音の解像度が重要になります。
音の解像度というのは、情報量や密度とも言いかえられるんです。
ハイレゾ音源は、音の表現力が細かく原音に近いデータ量という性質を持ちます。言い換えれば、音の情報量が多いということです。
つまりは、音の情報量が多い高解像度系のイヤホンやヘッドホンなら、ハイレゾ音源の良さを引き出せるということになります。
そして、高解像度のモデルはそこそこの価格がすることが多いです。解像度を高めるには、さまざまな部品の性能を高め、設計にもこだわる必要がありますから。コストがかかるんです。
ハイレゾマークは保証ではなく目安
ハイレゾは低音域に規格が無く、ハイレゾマークは高音重視の安価なイヤホンでも付けられると説明しました。
加えて高解像度であることがハイレゾを楽しむのに最も重要であり、高解像度な音を出すイヤホンなどは概して値段が高くなりがちということでしたね。
つまり、ハイレゾマークというのは、音質を保証するものではないということです。
ハイレゾマークは、高音域重視の安価なイヤホンでも基準を満たせます。だけど低音が弱いとせっかくの音の表現力の高さという魅力も半減しますよね。低音は、音作りの支えになるとても重要な部分ですから。
ハイレゾマークは、ただの目安に過ぎません。
マークに踊らされないようにしたいところですね。
結局ハイレゾを楽しむのに必要な環境とは
ここまで色々語ってきましたが、結局のところハイレゾを楽しむのにどのような環境が必要なのでしょうか。
まず、重要なのはハイレゾ対応のDAPなどのプレイヤーです。プレイヤーに関しては、ハイレゾ対応でないといけません。
ハイレゾ音源はほとんどFLACなので、FLACが再生できないプレイヤーではダメ。サンプリング周波数と量子化ビット数も、それぞれに限界値があります。この性能の上限がハイレゾの基準以上でなければ、ハイレゾをハイレゾとして再生することができません。
巷で言うハイレゾ音源は日本オーディオ協会の基準なので、96kHz/24bit以上の性能が必要ということですね。
続いて必要なのは、高解像度な音を出すイヤホンやヘッドホン、スピーカーです。
製品レビューなどでは、必ずと言って良いほど高解像度な製品は高解像度だ、と説明しています。大切なウリ文句ですからね。気になる製品があれば、レビューや紹介記事などを読むと良いでしょう。
そこに高解像度と書いてあれば、目安になります。
もちろん、一番良いのは自分の耳で確かめることです。
あとは、当たり前ですがハイレゾ音源が必要になります。
ハイレゾ音源は音楽配信サイトでダウンロード販売されているほか、Amazon Music HDなどのストリーミングサービスでも再生可能です。
大事なのは実際の音! 定義に惑わされず良いと思うものを買おう
ハイレゾという言葉は、独り歩きしているように感じます。
ただ、実際はCDよりもマスター音源に近くて音の表現が細い音源、というに過ぎません。ハイレゾという言葉が流行る前から、海外などでは当たり前のようにハイレゾ相当の音が楽しまれてきました。
一番大事なのは、実際の音です。
高解像度な音を出してくれるのか、自分好みの音の傾向か…。
ハイレゾという言葉に惑わされず、自分が良いと思うような製品を買いましょう!