へみ
突然ですが、問題です。
AAC,FLAC,DSD,MQA,WAVとは、一体なんでしょうか?
そう、音楽ファイルのフォーマットです。他にもさまざまなフォーマットがありますが、この違いをしっかり理解している人はそう多くはないのではないでしょうか。
なんとなく、自分の持っているデバイスが対応しているものがどれ、というくらいでしょう。
ただ、フォーマットの違いを理解すれば、より音楽が楽しくなります。
そこで今回は、音源のフォーマットや圧縮形式について、基本とそれぞれの違いを紹介しましょう。
目次
まずは押さえたい! 音楽の圧縮形式とビットレート
音源のフォーマットの違いについて理解するには、まず圧縮形式、ビットレートについて基本を知る必要があります。そこで、音楽の圧縮形式、ビットレート、kHzやbitなどについて紹介しましょう。
可逆圧縮と非可逆圧縮の違い
音源の圧縮形式には、大きく分けて可逆圧縮と非可逆圧縮の二種類があります。
非可逆圧縮は、最も多く使われている形式です。MP3などがこれにあたります。20Hz~20kHzの間で圧縮するのが特徴です。これは、人間の可聴域の幅と同じ値になっています。これよりも低い音、高い音はカットされるんです。
判別しにくい部分を排除しながら圧縮するので、音質をある程度保ちながらサイズを抑えることができます。
へみ
ただ、実際の可聴域はもう少しブレがあると言われてるんだ
つまり、これより高い音も微妙に聞き分けられるってことね
あや
可逆圧縮は、オリジナルのデータを保ったまま圧縮する形式です。再生するときに解凍されて、元の非圧縮形式の音源に戻ることができます。そのため、音質はオリジナルと変わりません。
音の再現性が最も高いです。
可逆圧縮をロスレスとも呼びます。可逆方式でよく使われるのは、FLACです。ハイレゾ音源を扱うときに、可逆圧縮方式がよく出てきますよ。
また、非圧縮というのもあります。
非圧縮は、その名の通り圧縮しない音源フォーマットのことです。圧縮しないということは、音をカットしていないということなので音源の再現性が高い状態になります。
ただ、圧縮していないのでサイズは大きくなりがちです。非圧縮でよく使われるフォーマットには、wavがあります。PCで音源データを扱ったことのある人には、馴染みが深いフォーマットでしょう。
ビットレートとは?
ビットレートというのは、圧縮率のことです。圧縮するときに、この数値を指定します。単位はkbps(kilo bit per second)です。
難しい言葉で言えば、1秒間に何キロビットのデータを送ることができるかを表しています。値が大きいということは、それだけ1秒間にたくさんおデータを処理することができるということです。
つまり、ビットレートの値が大きいほどにデータのサイズは大きくなりますが、その分、音質は良くなるという特徴があるということです。
逆に小さくなればデータサイズが小さくなるものの、音質は下がります。
kbpsとkHzとbitとの違いとは?
音楽について調べていると、kbpsだけでなく、kHzやbitという単位が出てきます。
これらの違いについても、知っておきましょう。
kHzは、サンプリング周波数の単位となっています。これは、1秒間の音の表現にどれだけのデータが使われているか、というようなことです。
数値が大きいほど、高い音域まで記録できるということになります。
また、周波数特性にもkHzは用いられるんです。
表記は20Hz~20kHzというように、範囲となっています。1kHzは1000Hzのこと。この左側の値が小さい方が、低音がどれだけ聞こえるかを示しているんです。右側の数値が、高音がどれだけ聞こえるかを示しています。
つまり、左側の数値が小さければ小さいほど、より低い音まで聞こえるということです。そして、→の数値が大きければ大きいほどに高い音域まで再現してくれます。
bitは、量子化ビット数です。音の解像度、細かさ、密度などと考えればわかりやすくなります。この数値が大きくなるほどに、より小さく細かい音まで再現して鳴らしてくれるということです。
ただ、bitが大きければデータの容量も大きくなります。
また、44.1kHz/16bitのように書くことがほとんどです。
またkHzが出てきました。これは、先述したサンプリング周波数というものです。1秒間に何回音をサンプリングするかというのを示しています。
CDを例にしましょう。CDは20Hz~20kHzの周波数特性です。この間の音を、1秒間に4万4,100回サンプリングしているため、44.1kHz。そして量子化ビット数は16bitなので、44.1kHz/16bitの音源であると言えます。
- サンプリング特性(〇〇Hz~〇〇kHz):音域の範囲の指標
- サンプリング周波数(kHz):数値が大きいほど高い音域まで記録可能
- 量子化ビット数(bit):数値が大きいほど音の解像度が高い
へみ
解像度の高さは、音の情報量の多さ!
ハイレゾとは?
ハイレゾは、高解像度という意味があります。明確な定義はありません。
48kHz/16bitより高いリニアPCMデータという定義もあれば、96kHz/24bit以上のリニアPCMデータまたはDSDデータだという定義もあります。一般的には後者の定義を使うことが多いので、覚えておきましょう。
つまりハイレゾというのは、人間の可聴域を超えた音域も出せて、解像度が高い音源のことです。
その特性上、可逆圧縮方式がよく使われます。
フォーマットの変換について
先ほど非可逆圧縮と可逆圧縮との違いを説明しましたが、たおえば非可逆圧縮の音源を可逆圧縮の音源に変換したらどうなるか、気になる人もいるでしょう。
非可逆圧縮のフォーマットは、既に音の情報の一部がカットされている状態です。ここに、元の音源データは入っていません。これを可逆圧縮フォーマットに変換したところで、音の情報量自体は変わらないということです。
そのため、手軽にハイレゾ音質を楽しもうとして非可逆圧縮を可逆圧縮のフォーマットに書き換えたとしても、ハイレゾにはならないということですね。
へみ
ハイレゾを楽しむなら、最初から可逆方式の音源を手に入れないといけないんだ
音源のフォーマットをそれぞれ解説!
ここまで、音源のフォーマットの違いについて深く理解するための予備知識を紹介してきました。ここから、本題です。現在よく使われている音源のフォーマットを7つ、解説していきます!
MP3
MP3は、長年使われてきた非可逆圧縮方式のフォーマットです。昔はインターネットの通信速度も今と比べるととても遅く、インターネット上に音声ファイルをアップロードしたり、動画をアップロードしたりする際にはしっかり圧縮しないといけませんでした。
とにかく容量を小さくすることに注力したフォーマットなので、音質は犠牲にされています。
未だにYoutubeなどでMP3の音楽動画が残っているので、それを聴いてもらえれば音質はわかるでしょう。
ただ、データ容量が小さく昔から一般的に使われてきた形式であるため、ほぼ全ての機器が対応しているという強みがあります。
へみ
昔はMP3で聞くのが当たり前だったね
DAPもMP3プレイヤーって呼ばれてたもんね
あや
AAC
AACは、動画の圧縮規格「MPEG-2」「MPEG-4」でよく使われます。
形式は、非可逆圧縮です。圧縮効率がとても高いのが特徴で、MP3に取って代わる存在としてよく使われます。特に、iTunesで使われることが多いので、ユーザーは目にしたことがあるでしょう。
生まれた当初は互換性が低くて使いにくかったのですが、改良が続けられ、現在は互換性もしっかりある一般的なフォーマットのひとつになっています。
基本的には、同じ圧縮率ならMP3よりAACのほうが高音質です。
非可逆圧縮音源なら、AACを使う方が良いでしょう。
WAV
WAVは、マイクロソフト社とIBM社が規格を定めた、Windows標準音声ファイル形式です。通常は非圧縮で、音質はよくサイズが大きなファイルになっています。フリー音楽サイトなどで音楽をダウンロードするとき、この形式になっていることが多いです。
iTunesに取り込むときには、自動的にAAC/MP3に変換されてしまいます。
ハイレゾ音源では、FLACと並んで主流なフォーマットのひとつです。ただ、WAVには、メタ情報が埋め込めないというデメリットがあります。
メタ情報とは、たとえばアーティスト名、ジャンル、レーベル、曲タイトル、アルバム名、曲順などの情報のことです。CDのファイルをPCに取り込んだとき、PC上にアルバム情報が出たりしますよね。あれのことです。
つまり、音楽配信サイトでFLACのハイレゾ音源を入手したときには、それらのメタ情報が一緒に付いてくることが多いということ。
WAVで手に入れると、それらが付いてこないため、プレイヤーなどでアルバム名・ジャケットなどを自動で表示してくれなくなります。
メタ情報が無ければ、トラックの関係性が無くなり、管理するのが大変になるんです。
また、メタ情報があるほうが単純に所有感があります。
へみ
WAVの非圧縮はとても魅力的だけど、一長一短ということね
FLAC
FLACは、オープンソースとして開発されている可逆圧縮形式のフォーマットです。特許の制約が無く、どこかの会社に許可を取らないといけないということもありません。ライセンス料も無いので、広く使われています。
前述したように、ハイレゾ音源で主流なフォーマットのひとつです。
以前から可逆圧縮の中で最も広く普及するだろうという声がありましたが、まさにその通りになってきています。
実際、ハイレゾ対応というDAPはたいていFLACに対応しているんです。ハイレゾが買える音楽配信サイトなどでも、ほとんどFLACが使われています。
WAVも広く普及しているものの、FLACはメタ情報を埋め込めるうえにオープンソースな点が音楽配信サイトの運営やレーベルが使うメリットです。
ALAC
ALACは、Apple Losslessというものです。Apple社が、iPod用に開発しました。形式は、可逆圧縮です。
CD音源と同じ音質を維持することができるというのが、売り文句になっています。
2011年10月からはオープンソースとなっており、Apple社以外も使いやすくなりました。ただ、FLACと比べると普及率は低い印象があります。
それでも、ハイレゾ相当の音源をiTunesからiPodなどに転送できない仕様になっているため、ハイレゾ相当の音源をiTunesで管理する場合にはALACが必要です。
結局のところ、Appleユーザーのためのフォーマットという点は、オープンソース化してもあまり変わっていません。
DSD
DSDは、SACDのためのフォーマットとし開発されたものです。SACDはクラシックやジャズでよく使われている、CDの約4倍のデータ量を持っているメディアのこと。通常のプレイヤーでは再生できませんでしたが、近年はそうでもなくなっています。
DSDを売るサイトも増えましたし、DSDに対応したDAPも増えましたから。
一般的なWAVなどの非圧縮音源をリニアPCMと呼びます。他の圧縮方式の音源も、ほとんどがPCMと同じ仕組みになっているんですよ。
DSDはリニアPCMと比べると、とても変わった特徴を持っているんです。
DSDは、PCMよりサンプリング周波数が高いものの、量子化ビット数が1bitとなっています。
量子化ビット数は音の細かさということですが、DSDは音の大きさの表現を0と1で表現しているんです。つまり、音があるか無いかの二点のみ。音のオンオフを切り替えることで、音の濃淡を表現します。
音質が低いというわけではなく、音の濃淡に焦点を当てながら、それをとんでもなく繊細に記録してくれるということです。
音質はPCMよりも生に近く、リアリティがあります。そのため、PCMよりDSDを好む人も少なくありません。
ただ、昔に比べれば扱われることが増えたと言っても、比較的入手困難であることは確かです。特にジャンルが限定されがちなので、ジャズやクラシックを聞かない人にとってはあまり意識することもないでしょう。
へみ
PCMとはまた違った味があって、クラシックとは特に相性が良いんだよね
MQA
MQAは、オリジナルのマスターサウンドを小さなファイルサイズに収めることのできるフォーマットです。最大352.8kHz/24bitの超ハイレゾ音源を再生できるのが強み。他の可逆圧縮のハイレゾ音源よりも圧倒的に容量が小さいため、CDにも入れることができます。
MQAを入れたCDをMQA-CDと呼びますが、物理的には普通のCD同じです。製造工程も変わりません。
ただ、MQAデータを再生できるCDプレイヤーやDAPが少ないというのがネックです。MQA音源の入手難易度自体も他のフォーマットと比べると、高い傾向があります。あまり広く普及しているとは言えません。
e-onkyo musicという音楽配信サイトには、MQAデータも販売しています。
ただし、全ての曲がMQAをダウンロードできるわけではありません。MQAが欲しいときは、e-onkyo musicを使い、各楽曲がMQAに対応しているかどうかをしっかりチェックしましょう。
へみ
もっと普及すれば、すごく魅力的なんだけどね
音源をダウンロードするときはフォーマットに気を配ろう!
音源のフォーマットには、それぞれに特徴があります。ハイレゾと言ってもFLACとWAVとでは、そもそも圧縮形式が異なるので音質も違ってくるんです。音楽をより楽しむためには、フォーマットにも気を配ることをおすすめします。
CDを買うときには気にすることはほとんどありませんが、音楽配信サイトなどで音源をダウンロードするときには、フォーマットに気を配りましょう。